| ミュージカル『HAND in HAND』(東京芸術劇場 2001.12) |
公演DATA/2001年12月12〜16日 東京芸術劇場小ホール2 全6回公演
吉田 佳美 役
シアタージャパンがハンドインハンド(以下ハンド〜)の稽古に入ったのは、10月の下旬でした。今回は、演出家が非常に忙しく、あまり例のない長丁場の稽古期間でしたが、実際の稽古日数は30日弱。・・・とはいえ、稽古に入った段階では、結構のんびりしていたのも事実です(笑)
【稽古初期】
稽古は、まず本読みから。いっつもそうなのですが、私はこの本読みの時が一番緊張します。本を渡されてから1週間ほど。自分では本読み前に何度か読んでいても、初めて共演者と絡む時はやっぱり緊張するものです。今回の作品は、キャスティングが難しかったようで、途中キャスティングが大幅に変わったりもしました。2日程本読みをして、すぐに立ち稽古が始まりました。それと同時に振り付けも始まります。今回、幕開きに歌が2曲続くのですが、その1曲目はダンスナンバー。その曲は本読みの段階で出来上がっていたので、まずはその曲から振り付けに入ります。曲調と、歌詞の内容から、ハードな振りなんだろうなぁとある程度予想はしていたものの、いざ振り付けに入ってびっくり!それはそれは息継ぎもままならないほどの振りがちゃくちゃくと付けられていきます。みんなもうヘロヘロ(笑)振り付けを進めながら何度も返して体に覚えこませます。うちの稽古場は鏡がないので、とにかくみんなと同じ動きをするので精一杯。しかも、全員が出ているので、合わせるのもなかなか大変です。ちょっと泣きが入りつつ踊りまくる日々でした。M2「ざけんなよ」に続き、M11「ざけんなよ2」、M10「ALL THAT DRUG」と激しいダンスナンバー曲が次々と上がり、それに合わせて振りもどんどん付いていきます。それと平行して、毎日付いた振りの振り固め。何度踊っても演出家のダメが出て、これでもかこれでもかと歯を食いしばるつら〜い日々。
芝居の方は、これまた大変なことになっていました(笑)1幕最初の「朝の教室」のシーン。ここは、「イジメ」のシーンです。これ程ひどいイジメが、毎日当たり前のように繰り返され、その目を覆いたくなるような悲惨さに、誰もが背中を向けている。「自分には関係ない」と思っている。もしかしたら、その悲惨な光景にすら慣れてしまっている。そんなイマドキの高校生の「いつもの朝の光景」を描くシーンです。私の役どころは、いじめっ子の女子高生。口だけで指示する「ボス」がいて、その手下のような感じで実行犯の男の子が二人いる。そして、それに加わってイジメを楽しんでいる二人の女の子。5人のいじめっ子対いじめられっ子。それがどうもギクシャクしてしまい、一人一人の「見せたいこと」がうまく出せずに空回りばかり。演出家からも言われていたのですが、私たちいじめっ子の役目は、とにかく『いじめを楽しむ』こと。そして、そのいじめは、私たちにとっては遊びの一環でしかないこと。けれど、5人の中での人間関係やある種の服従関係というのが曖昧で、どう表現すればよいのか悩む毎日でした。
【稽古中期】
ダンスは相変わらず毎日毎日振り固め。どんどん曲が上がってきて、覚える振りもどんどん増えて行きます。私は、M8「帰りたい」のあとM12「ALL THAT DRUG」まで、セットでもある自分の身長より遥かに高い板を持って(板の陰に隠れて)舞台上でじっとしていなければばりません。そしてM12が始まって、板の後ろから颯爽と(?)登場するのですが、この飼い殺しの時間が結構大変(笑)1幕の最初で登場してから出ずっぱりなので、板の後ろで立っているだけでも、滝のように汗が流れていきます。しかも、「冴子の独白」シーンが全然見えない!冴子役の佐知子さんの声だけしか聞こえないので、舞台上にいながら、今舞台上で何が起こっているのかよくわからない(笑)この頃、この作品のテーマ曲「HAND in HAND」が出来てきたのですが、その曲はNGに。私はとっても好きだったのですが、テーマの出てくる前後の芝居や雰囲気を考えると、どうも違う、繋がらないということで、作曲の大澤さんはもう一度作曲し直し。大変だ〜。
そしてやはりこの頃、芝居はもっと大変なことになっていました。どうにもこうにも「朝の教室のシーン」がうまくいかない。私は、一生懸命他の4人を引っ張ろうとしていたのですが、そうすると私の役・佳美が仕切っているように見えてしまう。それは佳美という立場的にはおかしいことで、そこが私の一番悩んだ所でした。いじめっこ5人組で、現役高校生役全員でと、役作りの為のキャラクター会議なるものが何度も開かれました。でも、いくら考えても私の中では、演出家にも言われたように「とにかく楽しむこと。いじめっこたちがいじめを楽しまないと、他の何を頑張ってもうまくいかない」という思いが強くなっていくばかりでした。とにかく、考えていても始まらない。稽古で何でもやってみよう!どこまで弾けられるのかやってみるしかない!
稽古の他では、今回はセットも道具も衣裳も、殆どやることがなくて作業が少なく、稽古に集中できる、私にとってはありがたい環境でした。帰宅時間も割りと早かったので、体力的にも精神的にも前回に比べてとっても楽でした。精神の状態が楽だとゆとりも生まれ、稽古場で鍋パーティーをやったり、地元の居酒屋さんが差し入れをしてくださったり、まるで大きな家族のように食事をしたりもしました。
【稽古後期】
芝居は段々と固まってきました。その中で、自分の役・キャラクターをいかに出していくか、「今日はこうしよう、ああしよう」ということが自然に出来るようになってきました。毎回思うけれど、思い悩んで追い詰められて、逃げ出したくなっても、必ず解決の糸口はあって、それを乗り越えると一気に芝居が楽しくなる!それが、たぶん成長したことの証なんでしょうね。
この頃の私は、2幕の最後の方で、いじめられっこの父親がいじめっこたちに包丁を向けるシーンに苦戦していました。ここは、父親が包丁を出してまでして息子を守ろうとし、「女番長」たちが父親の生きてきた過去を読みながら温かく見守る感動的な(?)シーン。それと共に、それをみたいじめっこたちが改心して「ごめんなさい」と泣きじゃくる(?)という大事なシーンでもあります。でも、稽古を何度も繰り返しているうちに、「ごめんなさい」と言いながら泣きじゃくる私の芝居が「うそくさい」とだめ出しされるように・・・(^^;慣れてきてしまって、「泣く」ことに囚われた結果でした。心から「ごめんなさい」と思うからこそ自然に涙が溢れてしまうのであって、泣いたから「ごめんなさい」と言っているのではないのです。「ごめんなさい」という気持ちが薄れてきてしまった為「うそくさい」涙が出たのでした。
佳美という女の子は、(私の作った役では)家族の愛に飢えている子。家に帰っても居場所がない。だから学校がまるで天国のようだった。昔は佳美自身いじめられていて、もう二度といじめられないように、いじめる側になった。嫌われないように、嫌われないように、仲間についていくことに必死だった。いつの間にか、いじめられる側の気持ちなんてこれっぽっちも思い出せなくなって、ただただいじめられている奴を見ているのが楽しかった。自分を心配する親の存在なんて思いつきもしなかった。安らげる場所なんてなかった。家族なんて、親なんていらないとさえ思った。そういう女の子。そんな佳美の思いを考えたら、いじめられっこの父親に包丁を向けられた瞬間佳美が何を思うのか、解ってきました。例えば、人に包丁を向けてまで守ってくれる父親をもついじめられっこを羨ましく思うかもしれないし、自分の父親にダブらせて見るかもしれない。刺されるのなら、謝りたい、純粋にそう思っただけかもしれないし、「親の愛」を感じて謝らずにはいられなくなったのかもしれない。とにかく、そういう佳美の心の動きが解ってきたのです。
振りは相変わらず毎日振り固め。M2「ざけんなよ」4回、M11「ざけんなよ2」5回、M15「バリバリ伝説」3回を立て続けにやった日もありました。さすがに半べそ状態(笑)私は、肺が爆発しちゃうんじゃないかと真剣に心配してしまいました(笑)歌は、テーマ曲が再度出来上がりましたがまたまたNG。本番に間に合うのか、歌詞が覚えられるか不安がよぎります(笑)毎日通し稽古を2回・3回と繰り返す日々。程度は違っても、みんなが思い悩み、苦労を重ねた稽古の結果がうまく本番に出るといいのだけれど・・・。
【稽古・本番を終えて】
今回も、お陰様で評判が良く、早速再演が決まりました。
テーマ曲も無事本番3日前に出来上がり(笑)3日間でM3、M12、大ラスと、テーマ曲のステージングをしてようやく完成しました!(笑)小屋に入ってからも、毎日音出しでダンスナンバー中心に何度か返しました。
今回の個人的な一番の収穫は、「周りを見れるようになった」ということです。いい意味でリラックスしてやることが出来、やっている自分を見るもう一人の自分の目を、ちょっとだけ持てるようになったお陰で、周りの芝居や雰囲気を感じられるようになったし、「相手の為の芝居」というのが少しわかる様になりました。これは、今回とっても大きな収穫でした。
いつもよりも、稽古期間があっという間に終わってしまった気がして、不安に押し潰されそうにもなったけれど、再演ではより一層自分の役目をきっちり果たせるように、腕に磨きをかけて挑みたいと思います。
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