| ミュージカル『BLUE PLATE SPECIAL』(シアターアプル 2000.7) |
稽古裏話
2000年6月6日。
この日から、私達THEATER JAPANはミュージカル『BLUE PLATE SPECIAL』に向けて稽古に入りました。3月29日から4月2日に、東京芸術劇場で上演されたこのミュージカルですが、予想以上の反響に驚く間もなくとんとん拍子に再演の話がまとまり、千秋楽から僅か2ヵ月で再演の稽古に入ったわけです。多くの期待と声援から生まれた再演ですから、初演よりグレードアップした舞台を、という演出家・出演者一同の意気込みは当然ですが、この時私はまだ、これから初日までの1ヵ月に及ぶ稽古が、どれだけ辛く険しい道のりかと言うことを考えてもみませんでした・・・・・・
【稽古初期】
初演に出演した人の中には、スケジュールの都合で再演には出られない人が何人かいたので、今回はニューメンバーが3人加わりました。仲良くなれるといいなー(笑)・・・そんな背景があったので、再演といえど、稽古は本読みから入ります。
実は私も、初演とはキャスティングが変わったので、ある意味ニューメンバーとは立場が一緒でした。(初演に出演したなかで、キャスティングが変わったのは私だけだったし)私にできるのかなぁ・・・と多少の不安を抱きつつ、台本のページをめくります。
さて、この「BLUE PLATE SPECIAL」というお話は、病院(医療問題)をテーマにした、涙有り笑い有りの人間ドラマ。病院という設定上、ダンスシーンがあまり多くはありません。そこで、少ないダンスシーンなのだからハードに!というコンセプト(・・・だったかどうかは不明ですが(笑)少なくともそう思えるくらいハード!)のもと、初演より激ハードな振り付けも着々とつけられていきました。
稽古に入って1週間弱は、本読みと歌稽古に明け暮れた日々でした。
私が演じるのは「河井雅美 16歳」。婦長の娘で、ヤンキー(?)です。この役は初演ではダブルキャストでしたが、今回は私一人でやることになったので、そういう意味での不安も募ります・・・私が、こんな大きな役をやってもいいんだろうか・・・
実は、本読みの時点で、演出家からのダメ出しが連発。・・・この先、どうなるんだろう・・・気分は早くもブルー・・・・・・
【稽古中期】
いよいよ立ち稽古が始まりました。色々なシーンがどんどん作られていきます。再演ということもあって、前回よりもスムーズに稽古が進んでいきます。
雅美の最初の登場シーンは、主人公・岡田医師(夏 夕介)とのからみ。・・・・・・私は、早速このシーンでつまづきました。自分として考えられる理由は2つ。1つは、初演の2人の雅美の稽古を間近でずっと見ていたこと。自分では意識していないつもりなのに、セリフの言い回しが初演の雅美にそっくりになってしまう・・・つまり「真希枝の雅美」というオリジナリティーがまったくなかったのです。2つめは、プレッシャー!実は私は、前回の稽古の時、2人の雅美がどちらもいない時があり、その時に雅美の代役をやった事がありました。それがなぜか、演出家曰く「ダメの出しようがなかった」程に素晴らしい出来で(笑)ことあるごとに「あの時の真希枝の芝居は凄かった」と言われていたのです。あの時を越えるものを見せなくちゃ・・・そんなどうでもいいことに、私は縛られていました。
この作品の中で唯一のお笑いキャラ「三婆」(文字通り3人のおばあちゃん)(3人とも男性が演じています)とからむシーンは、本当に大変でした。何度やってもダメ。「違う!もう1回」「はい最初から」「雅美はそんな子じゃない!」「作り過ぎ!ダメ!」「相手の芝居が変わったのに、なんで雅美の反応が変わらないんだ?」・・・・・・もう、何をどうしたらいいのかさえ、解らなくなってしまいました。毎日毎日、居残りの抜き稽古。でも何度やっても上手くいかない・・・演出家の言ってることはよくわかっているのに、いざやってみると思ったように動けない。今思えば、一生懸命頭でばかり考えていたのだと思います。
そしてとうとう、私は泣きました(笑)何度やっても、違うと言われてしまう。どうしても上手くいかない。もう悔しいったらありゃしません。まいにち私の為に居残って稽古につきあってくれる三婆や岡田先生にも申し訳ない・・・三浦さん(演出家)だって、私を雅美にして後悔してるんじゃないか・・・悔しさと、自分への苛立ちが、涙になって流れて行きました。(;_;)
でも、泣くのがいいことなのか悪いことなのかは別として、私は泣いた事によって、多少なりとも吹っ切れた部分がありました。まわりのベテラン役者さんたちは、芝居のアドバイスをくださったり、気分転換にと飲みに誘ってくださったり。そんな時、演出家がこんな事を言いました。「真希枝をそのままだしたら雅美じゃないか。作ろうとしなくたって雅美なんだよ」・・・。なんだか目が覚めた・・・という気分でした。と同時に、一筋の光明が見えたような・・・。
そっか!そっか!そっかぁー!!!そういうことかぁー!!!!
その日を境に、あれだけ嫌だった稽古がちょっとだけ楽しくなりました。
・・・とはいっても、「真希枝をそのまま」ってどういうことだろう・・・私はいつもどう言う風に喋ったり、騒いだりしてるんだろう?自分の事というのは、わかっているようでじつは全然わかってないものです。少なくとも、周りの人から見た私はどういう女の子なんだろう?私の前に立ちはだかる壁は、まだまだ分厚く、高いものでした。
そして今度は「声のトーン・動線」がいつもいつも同じになっていたのです。その日の周りの人達の感情や動きが違えば、雅美の感情だって動きだって変わるはず。段取りじゃなく、フィーリングで演じなくちゃいけないのですから。それが、私は「段取り」になっていました。稽古期間はあと僅か。もう悩んでいるヒマはありませんでした。
やるしかないっ!!
【稽古後期】
稽古が後期に入っても、なかなかうまくいっていませんでした。この時期はもう固めの段階。毎日、13時から20時まで通し稽古の繰り返しです。でも私は、毎日出されるダメ出しに消化不良を起こし(笑)、この段階でもまだパニックっていました。
毎日ヘトヘトになって、家に帰る気力もなく、年の近いキャスト達と「健康ランド」(?)へいったり、演出家の家に泊まって芝居談義に花を咲かせたり(笑)、はちゃめちゃな日々が続きました。
もう、私にやれるんだろうか・・・なんて言っている場合ではありません。課題はたくさんあるけど、乗り越えるしかないんです!この時期が私にとって、一番辛い時期でした。
でも、同時に一番充実していた時期でもありました。 自分が「雅美」をやるんだ、ということをあらためてひしひしと感じていました。前回とまったく違った雅美だっていい!「真希枝の雅美」は「真希枝の雅美」だ!稽古締めの日まで、暗中模索の日々でした。
・・・・・・この続きは「本番編」で!
【稽古が終わって】
今回、演出家は私に付いている芝居のクセ(声のトーンや動線など)を取り除くのに苦労していたようです(笑)
自分的に、今までやってきた中で今回が一番辛い稽古だったのですが、そのぶん得たものもたくさんありました。
辛くて嫌で、逃げ出したかった稽古が、今では楽しかった思い出になっているのだから不思議なものです。
本番裏話
【7月10日】
いよいよ小屋入り。大道具・小道具・衣裳・音響・照明・・・次々に道具が運び込まれていきます。今回はセットも大掛かりなもので、小道具もたくさんありました。各セクションに分かれて、スタッフのお手伝いをします。9時に入って、終わったのは夜10時(涙)大変な作業です。
【7月11日】
ワイヤレスマイクを付けての「ワイヤレスチェック」。その後、場当たりに入ります。シーンごとの人物・道具の位置が決められていきます。照明やマイクの関係で、稽古とは多少位置がずれたりするのはしょっちゅうです。場当たりは、1幕の頭からラストまできっちりおこなわれます。
そして、ゲネプロ(GP)。GPとは最初から最後までを何もかも本番と同じように行う事です。衣裳・メイクをつけて、あたかも本番のようなふいんきの中GPは進んでいきました。
すると、私の喉に突然変異が!!喉に異物感を感じるなぁ・・・と思ったら、声がかすれてきたのです!!!!本番は大丈夫だろうか?!?!?!
【7月12〜16日・本番(7回公演)】
いよいよ本番が始まりました。
初日はほどよい緊張感の中、芝居のテンポもよく大成功!!幸先よいスタートでした。
でも、喉の調子がっ!!本番中は気が張っているのか、スムーズに声が出るのですが、そこで思いっきり出してしまうので、1回舞台が終わるごとに酷くなって行く声・・・・・・
14日(金)の昼に、当初は予定していなかった追加公演が入ったので、千秋楽まで喉がもつかどうか、とーっても心配でした。蜂蜜の一気飲み・喉飴・喉スプレー・喉の漢方薬・・・キャストのみんながいろいろくれたのですが、酷くなってゆくばかり(涙)雅美は、ほんの少しだけど、歌のソロパートがあるので、なによりそれが気がかりでした。
そして、15日(土)ソワレ!!とうとう舞台に出ても声がガラガラ・・・!!!この時ばかりは、泣きそうなほどでした。どうにか舞台を終えて楽屋に戻ると、悔しくてまた泣きそうになったのでした(笑)
今回の劇場「シアターアプル」は、楽屋が遠くて死にそうでした。劇場は地下2階。楽屋は2階。その間の地下1階・1階は、「新宿コマ劇場」で、「長山洋子ショー」をやっていました。「長山洋子ショー」をやっている時間は、エレベーター使用禁止。出番を終えて楽屋に帰るのが一苦労でした。あまりに遠かったので、キャストの中には本番中1度も楽屋に帰ってこれない人もいたほどです。
大好評の内に幕をおろした「BLUE PLATE SPECIAL」。次は年明けからの地方公演です。また頑張らなくては・・・・・・演出家の話では、アンケートなどもお褒めの言葉でいっぱいだったとか。またまた予想以上の嬉しい評価に、辛かった稽古は無駄ではなかったと思うのでした。
みなさん本当にありがとうございました
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